西日

わたしは大事なものごとをよく忘れる。

その一方、ほんの何気ない情景や人の仕草、会話のやりとりなんかを、変なタイミングでふと思い出す事はしょっちゅうある。

普段はそんなこと、すっかり忘れているのだけれど、日常の中で、ずっと見つからなかった大事なピースがはまるみたいに、その「なにか」の水面下の意識にふれたような気持ちになったとき、数珠つなぎのように、ぱぱぱっ、と繋がるものがある。

昨日、何気なく街を歩きながら、友が「いまくらいの時間のこの光の角度が好きなんだ。」

と言った横顔を、その奥にあるちょっとした憂いとか優しさとか純粋さとか、そのとき感じた彼女の原風景とかをぜんぶひっくるめて、きっとまたこれからもちょくちょく思い出す事になるんだろうな。。

直接的に差し出されたものより、そっと身に纏ってる雰囲気だとか、言葉のすみっこだとか、そういうもののほうが、核心に近いようなものごとは、この世の中にもっともっといっぱいある気がします。

そこを見つめて歩いて行く事は、時にしんどいと思うのだけれど、できるだけ、これからはより、人間的にそこには敏感で柔軟でありたいと願うのです。